格闘技の華やかな舞台で、ラウンド間に登場するラウンドガール。
しかし、近年「ラウンドガールはいらないのではないか」という声が高まっています。
試合の進行を妨げる「邪魔」な存在だと感じる方や、その役割自体に疑問を持つ方も少なくありません。
一方で、興行に不可欠な存在だという意見もあり、議論は白熱しています。
この記事では、なぜ「ラウンドガールはいらない」と言われるのか、その賛否両論の理由を深く掘り下げます。
さらに、その歴史や具体的な仕事内容、どうすれば「ラウンドガールになるには」という疑問、そしてプロとしての実態まで、あらゆる角度から徹底的に解説します。
「ラウンドガールはいらない」と言われる主な理由【不要派の意見】

「ラウンドガールはいらない」という意見は、主に倫理的な観点や試合進行上の役割への疑問から生じています。
これらの意見は、時代の価値観の変化を反映しており、格闘技ファンの間で活発に議論されています。
理由1:女性の役割を限定的・性的に見ているという倫理的な批判
ラウンドガールが不要とされる最大の理由は、女性を性的な役割に限定し、客体化しているという倫理的な批判です。
露出度の高い衣装でリングに上がり、選手の戦いを彩る「華」として扱われる姿は、現代のジェンダー平等の観点から問題視されることがあります。
特に女性ファンからは、「男性ファンが喜ぶから」という安易な発想で女性の性を消費しているように見える、という厳しい意見も出ています。
このような見方は、ラウンドガールの存在そのものが、女性の社会的役割に対する古い固定観念を助長しかねないという懸念に基づいています。
理由2:「神聖なリングを汚されている」と感じるファンの存在
一部の熱心な格闘技ファンにとって、リングは選手が命を懸けて戦う「神聖な場所」です。
その神聖な空間に、試合とは直接関係のない華美な衣装の女性がヒールで立ち入ることに、強い嫌悪感や違和感を覚えるという意見があります。
選手やセコンドがリングに対して常に敬意を払っている姿と対比し、ラウンドガールの存在がその神聖さを損ない、試合観戦への集中を妨げる「邪魔」なものだと感じてしまうのです。
理由3:試合進行において「実用的な役割がない」という指摘
ラウンドガールの主な役割は、次のラウンド数を示すボードを掲げることです。
しかし、現代では会場の大型スクリーンやテレビ放送のテロップで、ラウンド数は即座に確認できます。
そのため、実用的な役割は既になく、「最も無駄な存在」ではないかという純粋な機能面からの指摘があります。
興行的な演出以上の必要性を見出せないという点が、不要論の大きな根拠の一つとなっています。
理由4:海外の格闘技やモータースポーツでの廃止・見直しの動き
海外に目を向けると、ラウンドガールやそれに類する存在を見直す動きが加速しています。
総合格闘技UFCの元王者ハビブ・ヌルマゴメドフ選手がラウンドガールを「無駄」と発言したことは、世界的な議論を呼びました。
また、モータースポーツの最高峰であるF1では、2018年に長年レースの象徴だった「グリッドガール」が廃止されています。
こうした世界的な潮流が、日本の格闘技界におけるラウンドガールの存在意義を問う声に、さらなる影響を与えています。
なぜラウンドガールは存在し続けるのか?【必要派の意見】

「いらない」という意見がある一方で、ラウンドガールは興行を成功させるために必要不可欠な存在だという意見も根強くあります。
その役割は、単にラウンド数を知らせるだけに留まらず、イベント全体に多面的な価値をもたらしていると考えられています。
理由1:大会やイベントに「華を添える」という興行的な役割
ラウンドガールが必要とされる最も大きな理由は、殺伐としがちな格闘技のイベントに「華を添える」という興行的な役割です。
激しい戦いの合間に華やかなラウンドガールが登場することで、会場の雰囲気が和らぎ、観客は視覚的なアクセントを楽しむことができます。
これは、ボクシングなどが単なるスポーツ競技としてだけでなく、観客を魅了する「ショー」としての側面も持っているためです。
エンターテインメント性を高める上で、彼女たちの存在は重要な要素だと考えられています。
理由2:格闘技を知らない層への「入口」や「広告塔」になる効果
ラウンドガールの存在は、格闘技に馴染みのない人々にとって、興味を持つ「入口」やきっかけになる効果があります。
特に、モデルやタレントとして活動している女性がラウンドガールを務めることで、普段格闘技を見ない層にまで大会の認知度を広げることが可能です。
彼女たちのSNSでの発信などを通じて、大会や出場選手に興味を持つ人が増えることは、格闘技界全体の裾野を広げる上で大きなメリットとなります。
理由3:ラウンドガール自身のファンが新たな観客を呼び込む実例
近年では、ラウンドガール自身が多くのファンを持つインフルエンサーであるケースが増えています。
「推し」であるラウンドガールを応援するために、彼女たちのファンが格闘技の会場に足を運ぶという現象も起きています。
これは、従来の格闘技ファンとは異なる新たな客層を開拓することに繋がり、興行の成功に直接的に貢献しています。
ラウンドガールは、もはや単なる「飾り」ではなく、自らが集客力を持つ「広告塔」としての役割を担っているのです。
現役ラウンドガールはどう考えている?来栖うさこさんの声
人気グラビアアイドルであり、キックボクシングイベント「KNOCK OUT」でラウンドガールを務める来栖うさこさんは、この問題について自身の見解を述べています。
彼女は、ラウンドガールが「絶対に必要な存在かと言われたら、そうではないかもしれない」と認めつつも、「いないよりはいたほうがいい」と語ります。
その理由として、自身が格闘技を知る「窓口」になる役割を意識していることを挙げています。
「大会の主役は選手」という強い意識を持ちながらも、自分が目立ちすぎない範囲で大会を華やかにし、ファンを呼び込む一助になりたいというプロフェッショナルな姿勢が伺えます。
そもそもラウンドガールとは?その歴史と仕事内容のすべて

ラウンドガールを巡る議論を深く理解するためには、その起源や具体的な仕事内容について知ることが不可欠です。
彼女たちの役割は、一般的にイメージされる以上に多岐にわたり、長い歴史の中で確立されてきました。
ラウンドガールの具体的な仕事内容一覧
ラウンドガールの仕事は、リング上でボードを掲げるだけではありません。
その業務はイベントの前後にも及ぶ、多岐にわたるものです。
主な仕事内容 | 詳細 |
ラウンドボードの掲示 | 各ラウンド間に、次のラウンド数を示したボードを掲げてリング内を歩く最も象徴的な業務。 |
イベントの盛り上げ | 選手の入場時や試合の合間に、笑顔やパフォーマンスで会場の雰囲気を華やかに盛り上げる。 |
勝利者セレモニー補助 | 試合後に勝利者へトロフィーを手渡したり、記念撮影に参加したりする。 |
メディア・スポンサー対応 | 大会のプロモーションの一環として、テレビや雑誌の取材に応じたり、スポンサー企業のPR活動に参加したりする。 |
SNSでのプロモーション | 自身のSNSアカウントで大会の告知やオフショットを発信し、ファンとの交流を通じてイベントをPRする。 |
いつから始まった?その起源は1965年のアメリカボクシング雑誌
ラウンドガールの歴史は、1965年にアメリカで最も権威あるボクシング専門誌「ザ・リング・マガジン」が、リング上でボードを持つ女性の写真を掲載したことに始まります。
この華やかな写真が大きな話題を呼び、興行主たちはボクシングの持つ残酷なイメージを和らげ、ショーとしての魅力を高めるために、次々と美しい女性をリングに上げるようになりました。
これが「リングガール(Ring Girl)」の誕生であり、その文化が世界中に広まっていったのです。
ちなみに、それ以前はタキシード姿の「リングボーイ」と呼ばれる男性がその役割を担っていました。
なぜ水着なの?衣装が過激になった歴史的背景
ラウンドガールが水着のような露出度の高い衣装を着る理由には、歴史的な背景があります。
リングガールが誕生した1960年代のアメリカでは、「トランクス一枚で戦う選手のそばにいるのに、なぜ女性が厚着をする必要があるのか?」という、当時の価値観に基づいた理由付けがなされました。
また、暴力的な描写と性的な描写を組み合わせることで、双方の刺激を際立たせるというエンターテインメントの演出手法も影響していると言われています。
こうした背景から、観客の目を引く華やかでセクシーな衣装が定着していきました。
「絵より目立つ額縁は不要」物議を醸した衣装問題の真相
近年では、ラウンドガールの衣装が過激すぎることが、新たな議論を呼ぶケースもあります。
2022年7月に行われたプロボクシングの井岡一翔選手の世界戦では、ラウンドガールの衣装が非常に際どいものだったため、「子供も見ているのに相応しくない」といった批判が殺到しました。
この件について、あるブロガーは「ボクシングの試合を絵画に例えるなら、ラウンドガールや演出は額縁。額縁が絵画そのものより目立ってしまっては本末転倒だ」と指摘しました。
これは、演出が行き過ぎて主役であるべき選手や試合内容から注目を奪ってしまったことへの批判であり、興行主側のセンスを問う問題として提起されたのです。
ラウンドガールの仕事の実態と求められるプロ意識
ラウンドガールの仕事は、華やかなイメージとは裏腹に、高いプロ意識と精神的な強さが求められる場面が少なくありません。
彼女たちは単なる「飾り」ではなく、イベントを円滑に進行させるためのプロフェッショナルとして、現場で重要な役割を担っています。
勝利者トロフィーを拒否されても…冷静な対応に見るプロの仕事
2024年4月に行われたキックボクシングイベント「RISE187」での一幕は、ラウンドガールのプロ意識の高さを示す象徴的な出来事でした。
激闘を制した梅井泰成選手が、勝利者トロフィーを受け取らずに「要らない!」と一言。
予期せぬ出来事に一瞬固まったラウンドガールでしたが、すぐさま冷静に対応し、選手の足元にそっとトロフィーを置きました。
さらに、もう一人のラウンドガールが咄嗟にトロフィーの向きを整えるという見事な連携プレーを見せ、この冷静沈着な振る舞いに、ネット上では「プロやね」「冷静だね」と称賛の声が上がりました。
このエピソードは、彼女たちが常に冷静さを保ち、いかなる状況でもイベントの品位を損なわないよう努めていることを示しています。
求められるのは容姿だけじゃない?SNSでの発信力も重要に
現代のラウンドガールには、美しい容姿やスタイルだけでなく、SNSなどを活用した自己プロデュース能力や発信力が強く求められています。
自身の活動や大会の魅力をSNSで発信することで、ファンを増やし、イベントの認知度向上に貢献することが期待されているからです。
フォロワー数が多いインフルエンサーであれば、それ自体がオーディションで有利に働くこともあります。
リング外での地道なプロモーション活動も、ラウンドガールの重要な仕事の一部となっているのです。
「女性にとって屈辱的な仕事?」という疑問に対する一つの答え
「ラウンドガールは女性にとって屈辱的な仕事ではないか?」という問いは、不要論と共によく聞かれる疑問です。
これに対する答えは一つではありませんが、多くのラウンドガールは、自身の仕事に誇りとやりがいを持っていると語ります。
イベントを華やかに演出し、ファンや観客と交流できることに喜びを感じ、自分の魅力を最大限に発揮できる場として捉えているのです。
もちろん、外見に対するプレッシャーや不規則な勤務といった課題もありますが、それを乗り越えるプロ意識と情熱を持って活動している女性が多いのが実情です。
ラウンドガールになるには?必要なスキルと気になる年収を解説

「ラウンドガールはいらない」という議論がある一方で、その華やかな姿に憧れ、「ラウンドガールになるにはどうすればいいのか」と考える人もいます。
ここでは、その具体的な方法や求められるスキル、そして気になる収入事情について解説します。
ラウンドガールになるための一般的な方法【オーディションが一般的】
ラウンドガールになるための最も一般的なルートは、格闘技イベントの主催者が実施するオーディションに応募することです。
募集は各団体の公式サイトやSNS、芸能プロダクションなどを通じて行われます。
オーディションでは、書類選考ののち、面接やウォーキング、自己PRなどのパフォーマンス審査を経て合否が決定します。
モデルやタレント、インフルエンサーとしての活動実績があると、選考で有利になる傾向があります。
特別な資格は必要?求められるスキルと資質とは
ラウンドガールになるために、特定の資格は必要ありません。
しかし、誰でもなれるわけではなく、以下のようなスキルや資質が総合的に求められます。
- 美しい容姿と健康的なスタイル:第一印象が重要なため、日々の自己メンテナンスは不可欠です。
- 表現力とパフォーマンス力:大勢の観客の前で、自信を持って笑顔で振る舞える能力。
- コミュニケーション能力:メディアやファン、スタッフと円滑な関係を築く力。
- 体力とスタミナ:長時間のイベントをこなし、常に最高のパフォーマンスを維持するための体力。
- プロ意識と規律:時間を厳守し、イベントの進行を妨げないよう行動する責任感。
ラウンドガールの平均年収はいくら?モデル業などとの兼業が多数
ラウンドガールの収入は、活動するイベントの規模や頻度、個人の人気によって大きく変動するため、一概には言えません。
一般的には、1回のイベント出演につき数万円から十数万円が相場とされています。
しかし、ラウンドガールの活動だけで生計を立てている人は少なく、ほとんどがモデルやタレント、会社員など、他の仕事と兼業しています。
一部の人気ラウンドガールになると、年収が数百万円に達するケースもありますが、安定した収入を得るのが難しい職業であることは確かです。
まとめ:ラウンドガールはいらない論争のすべて
「ラウンドガールはいらない」というテーマは、単純な要不要の二元論では語れない、複雑で多面的な問題を内包しています。
時代の価値観の変化と共に、その存在意義が問われ続けていますが、一方で興行を支える重要な役割を担っているのも事実です。
この記事で解説した内容を元に、改めてこの問題を考えてみることで、スポーツエンターテインメントのあり方について、より深い理解が得られるでしょう。
- 「ラウンドガールはいらない」という意見は主に倫理的批判と実用性の欠如から生じる
- 不要論の背景には女性を性的に見ることへの批判や海外での廃止の動きがある
- 一方、興行を盛り上げ、新規ファンを獲得する「広告塔」として必要だという意見も根強い
- ラウンドガールの起源は1965年の米ボクシング雑誌で、それ以前は男性のリングボーイがいた
- 仕事内容は多岐にわたり、リング上での活動以外にメディア対応やSNSでのPRも含まれる
- 高いプロ意識が求められ、予期せぬ事態にも冷静に対応する能力が必要とされる
- ラウンドガールになるにはオーディションが一般的で、特別な資格より容姿や表現力が重視される
- 収入は不安定で、多くはモデルなどの本業と兼業して活動しているのが実情である
- 衣装が過激すぎると、主役である選手より目立ってしまい本末転倒だという新たな批判も生まれている
- この論争は、スポーツエンターテインメントが時代の価値観とどう向き合うべきかという大きな問いを投げかけている